自覚症状はない
その日、カイン=ツェリベットの機嫌は、すこぶる悪かった。
*浮気なキャンディ
「っあ・・・い、かげん・・に、しろ・・っっ!」
しわくちゃになった白いシーツの上で、ハァと、浅く呼吸を繰り返しながら、潤んだ闇色の眼が咎めるように、その男の顔を映す。
闇色に解けているのは翡翠。
しかし、咎められた男はそ知らぬ顔で、ただ、すぅと目を細める。
ぐちゃと、下腹部から粘着質な音がした。
「ヒッ・・!」
びくりと、シーツの上に横たわった、白いからだが跳ねる。
「・・なにを、いい加減に、するわけ・・?“”?」
男が低い声で、言葉を落として、己の下で肌をさらす、身体の名を呼ぶ。
ぐちゃぐちゃと、音はとまらない。
「ッー・・うぁ・・や・・めぇ・・・カインっ・・!」
ぽろりとと呼ばれた者の闇色の眼から、涙が零れ落ちた。
カイン
そう呼ばれた男は、の目じりから零れた涙をチロリと、舌でなめとる。
ヒクリと、の喉が鳴った。
男女間で行われるいわいるセックス。性行為。
二人が今、しているのは確かにソレだったが、けれども、甘い声で喘ぐの身体は、男のソレだった。
「なぁ・・なにを、いい加減にすんの?」
耳元で、もう一度言葉を落としながら、の秘部に埋め込んだ指をくるりと動かす。
「ひぅ・・!」
ヒクンと、の身体が跳ね上がって、口から嬌声が上がる。
グチャと、また粘着質な音がした。
「あ・・・く・・い・・かげ・・・はな・・せ・・」
体の内側を、カインの指でぐちゃぐちゃとかき回されて、その刺激に喘ぎながら、はなんとか言葉を紡ぐ。
弄られる秘部からは、何度かカインを受け入れた名残の白濁がカインの指の間からあふれていた。
「だめ。まだ、たりねぇもん。」
クスとわらって、カインはの耳に吹き込む。
ぐるりと、中に埋め込んだ指で内壁を刺激するたびに、から甘い嬌声が上がって、ビクビクと白いからだが揺れた。
頬を薔薇色に染めて、いやいやと、が首を振るたびに、パタリ、パタリと、涙がシーツに落ちる。
もう、何度かカインを受け止めた身体はくたくたに疲れていて、すぐにでもは眠りに落ちてしまいたかった。
けれども、なかに埋め込まれたカインの指に、どろどろにとかされた内壁を刺激が、快楽が、ソレを許さない。
「あっ・・あっ・・や・・やだ・・っ・・も・・む・・り・・・・!」
「でも、、勃ってるぞ?」
いって、カインはもう片方の手での勃ちあがった中心に指を絡める。
「ひっ・・」
ぬるりと、先端から出た先走りを全体に塗りこめるようにして、扱きあげられて、はたまらず啼いた。
「きもちいい?」
「ひっ・・や・・っ!」
前と後ろ。両方の性感帯を弄られて、はボロボロとこぼした。
「なぁ、。」
きもちいい?
と、耳元でもう一度いって、カインはの白い耳たぶを甘噛みした。
こたえて?と、答えを促す。
言葉に、はキっと、カインを睨みつける。
快楽に溶けた、潤んだ目で睨まれても、それは雄の加虐心を揺さぶるだけだ。
その眼に、カインは苦笑して、「誘ってんの?」と、言葉を紡ぐ。
そんなわけ、あるか・・!
と、絶え絶えにがいった。
それにのんびりと「あーそう。」と返して、カインは笑うと、ぐりと、中に埋め込まれていた指が、内側にあるしこり、前立腺を抉った。
「−−−ッ!!!!」
悲鳴に近い高い声でが啼く。
ドロリと、カインの手を、白濁が汚す。
が放ったソレで汚れた指を、カインは見せ付けるように、チロリと、舌でなめる。
赤い下が、白濁をすくう様が酷くいやらしかった。
「・・・・さすがに、うすいな・・・」
ぺろと、唇をなめて、カインは目を細めて言う。
カっと、の頬が羞恥で熱を持つ。
「・・だれの・・せっ・・で・・・!!」
あらく息をつきながら、快楽の余韻にかすれる声で言う。
もう、はなせ。と何度目かわからぬ懇願をその後につけたした。
その懇願に、カインは唇に弧を描く。
「オレのせい?」
からかうような口調で言って、中に埋めたままだった指を引き抜く。
十分に溶かされ、開いてしまった入り口から、コプリと中に残されていたカインの白濁が漏れた。
つぅと、内腿をつたう感触に、ブルリとは震える。
引き抜かれた指に、はようやく終わったのかと、ほぅと息をついて、瞼を閉じる。
疲労した身体は一刻も早く睡眠をとりたがっていた。
しかし。
「!」
ぐいと、片足をとられ、カインの肩にかけられる。
「ごめん。。まだ、終わりじゃないから。」
ゆるゆると瞼を開ければ、ちっとも「ごめん」だなんて、思ってない表情でカインはを見下ろしていた。
ひたと、秘部に熱いものが押し当てられる。
「ッや・・・」
だめだ。
と、拒否する前に、ソレは入り口を押し広げて、中に侵入した。
「ああああっ・・・!」
にゅちゃと、淫猥な音と、嬌声。
幾度目かになる、雄の受け入れ。
もともと、受け入れるための機関ではないそこではあるが、カインの指でじっくりとならされたそこは、すんなりと雄を受け入れる。
「ひぅ・・ひ・・・っ・・!」
しかし、いくら回数をこなしていようと、どれだけ慣らされていたとしても、指よりも大きな質量のソレが挿入される瞬間の異物感は消えない。
ごりごりと、身体を割りひらかれる感覚に、は忙しなく胸を上下させて、浅く呼吸を繰り返しながら喘ぐ。
「・・ぜんぶ・・はいった・・・」
ずぐと、の腰に手を添えて、カインは奥まで自らを突き入れると、ふぅと、息をつく。
「あ・・・あ・・・」
突き入れられた衝撃に、喘ぐの頭をなでる。
じんわりと滲んだ汗で額に張りついた髪を払ってやった。
やさしく頭をなでるカインの掌に、指に安心したのか、がほぅと、息をつく。
その瞬間を狙って、カインはグっと腰を動かして、の中を攻め立てた。
「ひゅっ・・あ・・!あ・・・っ」
体の中をいっぱいに、侵食される。快楽に、は啼いた。
前立腺を指とは違う、熱く、硬いものに無遠慮につかれて、ただ、快楽の渦に飲まれる。
頬が薔薇色に染まり、だらしなく開いた赤い唇から、飲みきれなかった唾液が伝う。
「やらしいかお・・・」
トロリと、快楽に闇色の眼をとろかせて、生理的に浮かんだ涙がぽろりと目じりから零れてこめかみを伝う。
酷くいやらしいその表情にカインは微笑を浮かべて、誘うように薄く開いた唇に深く口付けた。
********
「よー。昨日はお疲れさん。」
軽く手を上げてニヤと笑う男に、は表情をゆがめた。
「・・・・なにが・・お疲れ様だ・・ノット・・・。」
「んー?昨日カインがなっかなか帰ってこなかったからさー・・で、多分、アンタとイイコトしてんのかなぁ?って」
ニヤニヤと口元に笑みを浮かべながら言うセオドールにはさらに眉間にしわを寄せた。
昨日の情事が頭の中に蘇る。
なんども、なんども突き入れられて、最後にはかすれた声しか出なくなるほど啼かされて、一日たった今だって、腰には鈍い痛みがある。
「あ、その様子じゃやっぱ酷かったんだ・・。昨日の・・・。」
渋い顔をしたに、セオドールは言う。
「・・・昨日は・・・機嫌が悪かったみたいだからな・・・。」
セオドールの言葉には特に隠すわけでもなく答えると、ふと気付いたように言葉を続けた。
「ノット・・やっぱりって・・なんでわかった?」
「え?」
の問いに、今度はセオドールがきょとんとした表情を作る。
「や・・なんでって・・そりゃあ・・・・。」
じっと見あげてくる闇色の目にセオドールは苦笑して、頬を掻いた。
事の発端は2日前のティータイム。
ドラコの実家から送られてきた色とりどりのキャンディを、どれをたべようか?と選んでいたときだ。
「オレ、これな。」
いって、きれいなガラス瓶に入れられたキャンディのなかから、セオドールは黄色を選んだ。
ドラコは薄い桃色、カインは青色、は緑色。
ただ、それだけ。
それぞれポイと、口の中に入れる。
けれどもは指先に緑色のキャンディをつまんだまま、じっと見ていた。
「・・・?、たべないのか?」
口の中でモゴモゴと、飴をころがしながら、ドラコが問う。
言葉に、は「なんか、もったいねーなって・・・」
キレイだから。
と、言葉を返した。
その言葉にドラコは頷く。
「まぁ、確かに綺麗な色だな。」
いいながら、まだまだガラス瓶にたくさん入ったキャンディを眺める。
「なんか・・丸いし・・ちょっと、似てるなぁって・・・」
ぽつりと、が言葉を付け足す。
なにに?とドラコが問えば、かえってきたのは「目の色」という答え。
今思えば、このときからカインの表情はあまり芳しくなかったもののように、思う。
じっと、指先につまんだキャンディを柔らかい表情で眺めるに、ニヤと笑ったのはセオドール。
「なんだよー。カインの眼の色に似てるから食べるのもったいないって?ノロケかよ!」
カイン=ツェリベットと=が同性ではあるものの、付き合っているというのは、周知の事実だ。
カインの目の色は、今が指先につまんでいるキャンディの色と酷く似ていた。
だから、そういうことなんだろうと、からかうつもりでセオドールはそう紡いだのだが・・・
しかし、セオドールの言葉に、はキョトンとした表情を向けて、とんでもないことを言った。
「なんでそこで、カインの名前がでてくるんだ?」と
要するに、はカインと同じ目の色のキャンディをみて、所謂「恋人」であるカインのことを考えていたのではなく、別の誰かのことを考えていたということで・・・。
その瞬間、カイン=ツェリベットの周りの空気の温度が下がった事は言うまでもなく・・
セオドールから血の気が引いたのも同時。
ドラコとはただ首をかしげていた。
(・・・なんでわかんねーのかな・・コイツ・・・)
見あげてくる闇色の目に、セオドールはため息をついた。
カインの機嫌が悪くなった原因などあきらかで、その瞬間にもは一緒にいたはずなのである。
否、むしろ原因はで、仮にも恋人の前であんな恋してるような目で恋人を差し置いて誰かを思い出すなど、浮気をしてるんじゃ?と誤解されても仕方がない。
でもって、その日の夜、カインが中々帰ってこないとなれば、「ああ、多分酷くされてんだろうなぁ・・・」とカインの性格をよく知るセオドールの考えが辿り着くのは当然といえば当然なのだ。
しかし、目の前の当事者であるには、なぜカインが機嫌が悪かったのかすらわかっていない模様であった。
はぁ・・と、もう一度ため息をつく。
「お前さ・・・。」
「なんだ。」
ぽむと、の肩に手を置いて、セオドールはうなだれた。
「・・・いや・・カインも、大変だなぁ・・・って・・・」
「はぁ?昨日大変だったのはオレのほうだ。」
表情を歪めるに、セオドールは、「はは・・」と、苦笑を漏らした。
おしまい!
エロがぬるすぎますね。すみません。orz
も、もっと主人公いじめてもよかったなぁ・・・
ジェラったカインに苛められまくられる主人公ってのが書きたかったのだけれど・・なんか、甘い・・・
セオドールは便利ですね。色々
あ、セオドールとカインは同室です。マイ設定。